「妊活=女性のもの」そう思っていませんか?
実は、妊娠の成立には男性の体づくりや生活習慣も深く関わっています。
精子の状態は日々のストレスや食事、運動の影響を受けやすく、知らず知らずのうちに妊娠のチャンスを下げてしまっていることがあります。
今回の記事では、男性が妊活中にできること、やるべきこと、そして気を付けたい習慣について、わかりやすく解説します。
これから妊娠を目指す人や、パートナーと一緒に妊活を考えたい人にとって、はじめの一歩となる内容です。
男性にも妊活は必要?まず知っておきたい基本知識
妊活は女性だけの問題ではなく、男性側の準備も妊娠の可能性を左右します。
ここでは、男性妊活の重要性や、妊娠に関わる男性側の要素について解説します。
妊娠には「男性側の準備」も影響する
妊娠の成立には、女性側の卵子と同じくらい、男性側の精子の質とタイミングが大きく影響します。
近年では、不妊の原因の約半数に男性側の要因が関係していることがわかっています。
WHOの調査では、男性のみに原因があるケースが約24%、男女両方に原因があるケースも約24%とされており、全体の約48%で男性側が関与している計算になります(※出典:こども家庭庁「男性不妊について」)。
たとえ女性の体調が万全でも、精子の運動率や数、DNAの状態が不安定であれば妊娠の確率は下がってしまいます。
まずは「自分には関係ない」と思わず、身体づくりや生活の見直しから始めてみましょう。
男性不妊の割合と主な原因とは
男性不妊の原因には、精子の状態の異常やホルモンバランスの乱れなどがあります。
主に見られるのは以下のような要因です。
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精子の数が少ない(乏精子症)
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精子の動きが鈍い(精子無力症)
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精子の形に異常がある(奇形精子症)
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精管が閉塞している、または射精がうまくできない
生活習慣や加齢、ストレス、睡眠不足なども影響しやすく、一見健康そうな人でも検査で問題が見つかるケースは少なくありません。
早めのチェックが、妊活の成功の第一歩になります。
パートナーと一緒に考える妊活のスタート
妊活は「夫婦ふたりで進めるもの」として、まずは話し合いの場を持つことが大切です。
男性の多くは「何をすればいいのかわからない」と感じている一方で、女性側は「自分ばかり頑張っている」とプレッシャーを抱えがちです。
「生活を少し整えてみようか」「検査ってどういう流れなんだろう」など、小さな言葉をきっかけにするだけでも十分です。
妊活を特別なことと捉えすぎず、「健康づくり」や「未来への準備」として前向きに始めてみてください。
男性妊活でできること|日常生活で見直すべき習慣
男性の妊娠力は、日々の生活習慣によって大きく左右されます。
ここでは、妊活中に見直したい基本の習慣を解説します。
睡眠・運動・ストレスケア
精子の質は、生活リズムやストレスの影響を受けやすいと言われています。
とくに睡眠不足や慢性的なストレスは、ホルモンバランスの乱れや精子の運動率低下につながるため注意が必要です。
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寝る時間を一定に保つ(7時間以上が目安)
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軽い有酸素運動を週2〜3回取り入れる
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デジタルデトックスや深呼吸でストレスを溜め込まない
激しいトレーニングよりも、続けられる軽めの運動と、リラックス時間の確保が鍵になります。
禁煙・禁酒・熱の影響に注意(サウナ・スマホ・下着)
精子は熱に弱く、日常生活のちょっとした習慣が、知らず知らずのうちに妊娠の可能性を下げてしまうことがあります。
とくに、喫煙・飲酒・熱のこもる環境は、精子の質に大きく影響するため注意が必要です。
以下の習慣は、妊活中にはなるべく避けたいポイントです。
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喫煙(タバコ):精子のDNA損傷や数の減少につながることが明らかになっています
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過度な飲酒:ホルモンバランスを乱し、テストステロンの分泌低下を引き起こす可能性あり
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長時間のサウナ・熱い風呂:精巣の温度が上がり、精子の運動率が低下するリスクがある
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スマホをズボンのポケットに入れっぱなしにする:熱や電磁波が精子の質に影響を与える可能性がある(※出典 NP「スマホは精子の質を悪化させる? 妊活男性が知っておくべき5つのデータ」
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)
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締め付けの強い下着:通気性が悪く熱がこもりやすいため、ゆとりのある下着や素材の見直しが必要
精子はつくられてから射精までに約70〜80日かかるため、生活を見直してから効果が出るまでには時間がかかります。
妊活を意識し始めたら、できるだけ早めにこれらの習慣を見直すようにしましょう。
自己判断でのサプリ乱用や筋トレのやりすぎに注意
妊活に前向きになるのはとても良いことですが、「よさそうだから」「効くと聞いたから」といった曖昧な情報だけで、極端な行動に出るのは逆効果になることがあります。
とくに注意したいのが、以下の2つのパターンです。
サプリメントの過剰摂取
妊活に関するネット情報の中には、「亜鉛がいい」「アルギニンが効く」などと特定の成分を過剰に勧めるものも見られます。
しかし、栄養素は多ければ多いほど効果が高いというものではありません。
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亜鉛やセレンなどは過剰摂取で吐き気や胃腸障害を引き起こすことも
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抗酸化作用を期待してビタミンEやCを大量に摂ると、逆にバランスを崩す可能性も
まずはバランスのよい食事を基本にし、不足しがちな分をサポートする目的で使うのが本来の使い方です。
「妊活用」と書かれていても、自分の体質や生活に合っているかは一度立ち止まって考えることが大切です。
無理な筋トレや極端な体づくり
男性の中には「妊活=男も体を鍛えないと」と思い、ハードな筋トレを突然始める人もいます。
ですが、過剰なトレーニングはむしろテストステロン値の乱れや精子形成の阻害につながるおそれがあります。
さらに、筋トレ時に使用される一部のプロテインやサプリメントには、精子に悪影響を与える可能性のある添加物やホルモン類似物質が含まれているケースも報告されています。
筋トレ自体は健康維持に役立ちますが、妊活中は「負荷をかけすぎず、週2〜3回の軽めの筋トレ+有酸素運動」程度が理想的とされています。
男性妊活に必要な栄養素とは?
精子の質を高めるには、特定の栄養素を意識的に取り入れることが効果的です。
ここでは、妊活中に意識したい栄養素とその摂り方について解説します。
精子の健康に役立つ栄養素(亜鉛・ビタミンE・葉酸など)
妊活中の男性にとって重要とされる栄養素は複数あります。
とくに以下の成分は、精子の生成や運動性、DNAの安定性に関与しているとされており、多くの研究でも注目されています。
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亜鉛:テストステロンの合成を助け、精子の数や質をサポート
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ビタミンE:強い抗酸化作用で精子の酸化ストレスを抑える
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葉酸:DNA合成を助け、精子の遺伝情報の安定に関与
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L-カルニチン:精子の運動率の向上に関係
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セレン:抗酸化酵素の働きをサポートし、精巣の健康維持に役立つ
これらは日常の食事からも摂取可能ですが、意識しないと不足しやすい栄養素でもあります。
3-2. 食事の見直し方と、手軽に摂れるおすすめ食材
妊活のための栄養は、まずはサプリメントよりも日々の食事での摂取が基本です。
無理なく摂れるおすすめの食材は以下のとおりです。
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牡蠣・赤身肉・卵黄(亜鉛・ビタミンB群)
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ナッツ類・アボカド(ビタミンE)
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緑黄色野菜・納豆(葉酸)
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青魚・ごま・全粒粉パン(セレン・不飽和脂肪酸)
加工食品やインスタント食品を減らし、主菜・副菜・主食をバランスよく揃えることが基本です。
食事の偏りはホルモンバランスの乱れにもつながるため、まずは自炊や弁当で1日1食でも整えるところから始めてみましょう。
サプリメントを選ぶときの注意点
どうしても忙しくて食事が整わないときや、不足が気になるときはサプリメントを活用するのも一つの方法です。
ただし、「妊活に効く」とされるものすべてが安全・有効とは限りません。
選ぶ際のポイントは以下の通りです。
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必要な成分が明記されている(上記の亜鉛・葉酸など)
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国内製造で品質管理がしっかりしている
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過剰摂取に注意し、1日の摂取量を守れるタイプ
特に“男性用妊活サプリ”とされるものの中には、根拠があいまいな成分や過剰な広告表現のものもあるため、かかりつけ医や薬剤師に相談しながら選ぶのが安心です。
妊活中にやりがちなNG習慣と意識すべきこと
妊活を頑張る中で、無意識に続けている習慣や言動が、かえって妊娠の妨げになることもあります。
ここでは「やってしまいがちだけど要注意」な行動を具体的に紹介します。
サウナや長風呂は精巣を温めすぎる
体を温めるのは健康に良いと思いがちですが、精巣は高温に弱く、長時間のサウナや熱い風呂は避けたい習慣です。
精子の形成には適度な冷却環境が必要とされており、日常的に体温が上がりすぎる環境は運動率の低下やDNA損傷のリスクにつながります。
スマホをズボンのポケットに入れるのは避けたい
スマートフォンをズボンのポケットに入れたままにしていると、局所的に熱がこもりやすくなるだけでなく、電磁波の影響も指摘されています。
研究では、精液サンプルをスマホの電磁波にさらすと、精子の運動率が低下する傾向があるとされています。
妊活中はスマホはバッグに入れるなどの工夫を。
自転車や長時間のデスクワークで股間を圧迫する
長時間の自転車移動や座りっぱなしの仕事は、陰部の血流低下や圧迫によって精子の質に悪影響を与える可能性があります。
クッションを活用したり、定期的に立ち上がったりするなどして負担を軽減するのが効果的です。
極端なダイエットや糖質制限に要注意
短期間で体を絞ろうとする過度なダイエットや糖質制限は、ホルモンバランスを崩す原因になります。
テストステロンが減少すると精子の生成も低下するため、過度な減量は避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
筋トレのやりすぎがホルモンに悪影響を及ぼすことも
筋トレそのものは健康的ですが、ハードすぎる負荷や頻度は体にストレスを与え、ホルモンの乱れや酸化ストレスの増加を招くおそれがあります。
週に2〜3回程度の適度な筋トレと、十分な休息を取り入れることが理想的です。
無関心に見える態度がパートナーを不安にさせる
妊活中、何もしていないように見える態度は、ときにパートナーを深く傷つけ、不安にさせてしまいます。
本人にそのつもりがなくても、「任せるよ」「まだ大丈夫でしょ」「焦らなくてもいいって」といった言葉は、“他人事”に聞こえてしまうことがあります。
妊活において大切なのは、知識を得たり具体的な行動をするだけでなく、気持ちを共有しようとする姿勢です。
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検査について一緒に調べてみる
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食事や生活習慣をふたりで整える
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「自分にできることはある?」と聞いてみる
ほんの少しの歩み寄りが、パートナーの孤独感や負担感を和らげ、妊活そのものを前向きなものに変えてくれます。
プレッシャーをかける言動がパートナーを追い詰める
妊活に前向きなつもりでも、「排卵日は?」「病院行ってきた?」などの言動が、知らないうちにプレッシャーになることもあります。
パートナーとの温度差を感じたら、「どうしたら一緒に前向きに取り組めそうか」を話し合う時間を大切にしてみてください。
妊活に思い詰めすぎない、ストレスを適切に発散する
妊活という言葉は、女性だけでなく男性にとってもプレッシャーを感じやすいものです。
「結果が出ない」「自分に原因があるかもしれない」と思うほどに、必要以上に焦ってしまったり、自信をなくしてしまったりすることもあります。
妊活においては、“真面目すぎる頑張り”がストレスに変わることもあるという点を意識しておくことが大切です。
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他人と比べない
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「今の自分にできる範囲」でやってみる
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モヤモヤしたら言葉にして共有する
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運動・趣味・会話など、自分なりの気分転換を持つ
妊活に前向きであることは大切ですが、その過程で心をすり減らしてしまっては、本末転倒です。
適度に気を抜くこと、笑える時間をつくることも、長い目で見れば妊活を支える大事な力になります。
不妊の検査は男性も受けるべき?病院でできること
妊活というと「まずは女性が検査を受けるもの」と思われがちですが、不妊の原因が男性側にあるケースは約半数にのぼるとされています。
だからこそ、男性も早めに検査を受けて、現状を正しく知ることが大切です。
精液検査とは?タイミングと費用の目安
男性が受ける基本的な検査は「精液検査」です。
これは、精子の数・運動率・奇形率・pHや量などを測定する検査で、比較的手軽に受けることができます。
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タイミング:3〜5日間の禁欲期間を空けてから採取
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方法:医療機関内で採取、または自宅採取→提出できる施設もあり
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費用:1回あたり3,000〜10,000円前後(自由診療・施設により異なる)
検査結果が出るまでには1週間程度かかるのが一般的です。
症状がなくても、「問題がないことを確認する」目的でも受ける価値があります。
男性不妊が見つかった場合の治療法
もし精液検査で異常が見つかった場合でも、多くのケースは生活習慣の改善や薬物治療で対応可能です。
治療法には以下のような選択肢があります。
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ホルモン治療:ホルモン値の異常がある場合、内服薬などで調整
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抗酸化療法:ビタミン類やサプリメントで酸化ストレスを軽減
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精索静脈瘤の手術:血流の滞りが精子の質に影響する場合に行う
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高度生殖医療(顕微授精など):重度の場合に必要となることも
検査や治療を早めに始めることで、パートナーの身体的負担を減らせる可能性もあるため、前向きな選択として捉えるとよいでしょう。
パートナーと一緒に病院へ行くメリット
妊活において、男女が同時に検査を受けることは大きなメリットになります。
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結果を照らし合わせて、最適な治療法を選べる
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女性側に偏りがちな負担やストレスを分かち合える
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“ふたりで妊活している”という一体感が生まれる
「女性が先に行って、そのあと自分が検査を受ける」という順序ではなく、最初から一緒に取り組む姿勢が信頼関係を深める鍵にもなります。
よくある質問Q&A|男性の妊活への疑問を解消
ここでは、男性妊活に関してよくある疑問や勘違いをわかりやすく解説します。
「これってどうなの?」という素朴な疑問に答えることで、妊活へのハードルを少しでも下げられたらと思います。
Q1. 精子ってどのくらいの周期でつくられるの?
A. 精子は、つくられてから射精されるまでに約70〜80日かかるとされています。
そのため、生活習慣を改善してもすぐには結果に現れません。
精子の質を高めるには、2〜3ヶ月前から準備を始めるのが理想的です。
Q2. 男性も葉酸を摂ったほうがいいの?
A. はい。葉酸は精子のDNAを安定させる働きがあるとされており、近年は男性側の妊活にも注目されています。
特に食生活が不規則な人や、ストレスの多い環境にいる人にはおすすめです。
食事から摂るのが理想ですが、補助的にサプリで補うのもよいでしょう。
Q3. 妊活中、性行為の頻度はどのくらいが理想?
A. 一般的には、排卵期に合わせて2〜3日に1回程度が推奨されています。
毎日よりも、間隔をあけることで精子の濃度が保たれやすいという研究結果もあります。
ただし、プレッシャーにならないよう、ふたりのペースを尊重することが最優先です。
Q4. 仕事が忙しくて生活改善が難しい。何から始めればいい?
A. 全部を変えようとすると続きません。
まずは「夜更かしをやめて睡眠を1時間増やす」「お菓子をやめてナッツに替える」など、小さな一歩から始めるのがコツです。
妊活は短期決戦ではなく、身体を整えていく“習慣づくり”。
無理なく続けられる工夫をしてみてください。
まとめ|妊活は「ふたりで向き合う」もの
妊活は、どちらか一方が頑張ればうまくいくものではありません。
お互いの状況や気持ちを共有しながら、ふたりで歩幅を合わせて進めていくことが大切です。
妊活期間中は、焦りや不安がつきまとうこともあるでしょう。
うまくいかない時期にこそ、「一緒にできること」「支え合える関係」が力になります。
妊活を特別なものと捉えすぎず、「日々の生活を整えること」や「話し合うこと」から始めてみてください。
小さな行動でも、それが未来の一歩につながります。