「マンジャロ」は、本来は2型糖尿病の治療薬として糖尿病治療薬として開発された医薬品です。
最近では、体重減少の作用がSNSやネットで話題になり注目され、ダイエット目的で使う人も出てきています。
しかし、医薬品のため医師の判断が必要な薬剤であり、安易な使用にはリスクもともないます。
短期的な効果だけでなく、副作用や体への影響も含めて、慎重に考える必要があるでしょう。
今回の記事では、マンジャロのしくみや期待される効果、注意したい副作用や使い方、処方の流れまでをわかりやすくまとめています。
使用を検討している人にとって、正しい知識を得るきっかけになれば幸いです。
マンジャロとは?痩せる注射の正体
ダイエット目的で注目されている「マンジャロ」ですが、もともとは糖尿病治療薬として開発された医薬品。
ここではマンジャロの本来の用途や、痩せるといわれる理由、そのメカニズムについて整理しておきましょう。
本来は2型糖尿病の治療薬
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、アメリカの製薬企業イーライリリー社が開発した2型糖尿病治療薬です。
日本では2023年4月に販売が開始され、医師の処方が必要なGLP-1受容体作動薬の一種として知られています。
血糖値をコントロールするために使われる注射薬であり、インスリン分泌を促進し、糖の吸収を緩やかにする作用があります。
ダイエットで痩せる理由と作用機序
マンジャロがダイエット目的で話題になっている理由は、体重減少作用が副次的に認められているためです。
主な作用は以下の通り。
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胃の排出を遅らせることで、満腹感を持続させる
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脳の満腹中枢に働きかけ、食欲を抑える
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インスリン分泌を調整し、脂肪蓄積を抑制する
このような仕組みにより、過食を抑えて摂取カロリーを減らし、結果的に体重減少が起こると考えられています。
他のGLP-1薬(オゼンピック等)との違い
マンジャロはGLP-1受容体作動薬に加え、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも作用する「GIP/GLP-1二重作動薬」である点が特徴です。
これにより、従来のGLP-1単独作動薬よりもインスリン分泌促進や体重減少作用が高い可能性があるとされ、特に海外では「次世代型の注射薬」として注目を集めています。
マンジャロのダイエット効果と期間
マンジャロは、本来糖尿病治療薬として使われるものですが、体重が落ちるという報告が多く、ダイエット目的でも注目されています。
ここでは、どの程度の減量効果があるのか、どのくらいの期間で実感できるのかを見ていきましょう。
臨床試験での具体的な減量効果
マンジャロ(チルゼパチド)は、アメリカの臨床試験「SURMOUNT-1」で投与72週間後に体重が平均で15〜20%減少したという報告があります。
特に15mgを使用したグループでは最大で22.5%の減量が確認されており、これは他のGLP-1受容体作動薬(オゼンピックなど)よりも高い効果とされています。
こうした結果から、肥満治療の新たな選択肢として、世界中で注目を集めるようになりました。
効果を実感し始めるまでの期間
マンジャロを使用した人の中には、1〜2週間ほどで「食欲が落ちた」と感じる人もいます。
ただし、実際に体重が目に見えて減少し始めるのは、おおよそ12週間前後が目安とされています。
焦らず、医師の指導のもとでじっくり取り組むことが大切です。
ダイエット成功例と失敗するケース
成功している人に多いのは、生活習慣の見直しとあわせて使用しているケースです。
玄米や野菜を中心にした食事内容への切り替えや、軽い運動、睡眠の質を高める工夫などと併用することで、薬の効果をより引き出せている傾向があります。
一方で、薬に頼りすぎて生活が変わらず、使用を中止した途端にリバウンドするケースも報告されています。
特にSURMOUNT-4試験では、薬の使用をやめた人の体重が数ヶ月で14%ほど戻ったという結果もありました。
あくまでも“補助的な手段”として考え、自分自身の習慣づくりが基本であることを忘れないようにしましょう。
考えられる危険性と主な副作用
マンジャロは体重減少効果が話題ですが、一方で副作用や注意点も知っておく必要があります。
医師の指導のもと、症状に注意しながら使用することが重要です。
主な副作用一覧(吐き気・下痢・便秘など)
一般的な副作用として、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹部不快感などの消化器症状が報告されており、投与量が多いほど発生率が高くなる傾向にあります。
注意すべき低血糖のリスク
単独使用では比較的低リスクとされていますが、インスリンやSU薬との併用、食事の遅れ、過剰な運動などによって低血糖が起こる可能性があります。
発汗、動悸、ふらつき、頭痛、意識障害といった症状が現れることがあり、早めの糖分補給が必要です。
胆石・膵炎・腎機能障害などの深刻な副作用
ごくまれに膵炎や胆石、胆嚢のトラブルが起きることがあります。
お腹の痛みや黄疸が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
また、嘔吐や下痢による脱水で腎機能が悪化するケースもあり、水分補給と定期的な検査が欠かせません。
甲状腺髄様がん(MTC)リスクと禁忌
動物実験では高用量で甲状腺の腫瘍が発生したとの報告があります。
人間への影響は不明ですが、甲状腺髄様がんや多発性内分泌腫瘍症(MEN2)の既往がある人は使用できません。
投与前に家族歴も含めて医師に確認しておくと安心です。
マンジャロ注射の正しい打ち方・使い方
マンジャロは自己注射が基本となる薬です。
正しい使い方を理解しておくことで、効果をしっかり引き出し、副作用のリスクも減らすことができます。
注射の頻度とタイミング
マンジャロは週に1回、同じ曜日に注射することが推奨されています。
- 注射の時間帯は毎回同じでなくても構いませんが、曜日は固定するのが理想的です。
- 食事との関係も特にないため、空腹時・食後どちらでもOKです。
仮に打ち忘れた場合は、4日以内であれば気づいたタイミングで注射して構いません。
ただし次のスケジュールに近い場合は、飛ばして次回から再開するのが安全です。
注射の打ち方(準備から廃棄まで)
マンジャロはプレフィルドタイプの自己注射ペンが一般的です。
初めての人でもわかりやすいよう、使い方の基本を紹介します。
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注射ペンを室温に戻す(冷蔵保管している場合は30分ほど置く)
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キャップを外し、注射部位をアルコール綿で消毒する
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お腹(腹部)または太ももに直角で垂直にあてる
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ボタンを押し込み、数秒間押し続けて薬液を注入する
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ペンを外して廃棄する(自治体の指示に従い、医療廃棄物として処理)
痛みを感じにくくするためにも、注射部位は毎回変える(ローテーションする)ことが大切です。
注射部位の選び方と注意点
マンジャロの注射に適しているのは以下の3か所です。
- 腹部(おへそから指2本分以上外側)
- 太ももの前外側
- 上腕の外側(自分では打ちにくいため他者の補助が必要)
同じ部位に繰り返し注射すると、皮膚が硬くなったり赤みが出ることがあります。
注射のたびに場所を少しずつずらす「部位ローテーション」が基本です。
また、傷や炎症のある部分、しこりのある場所、青あざの近くなどは避けてください。
マンジャロの薬価と保険適用の可否
マンジャロの費用や処方方法は、ダイエット目的で使う人にとって非常に気になるポイントです。
ここでは、日本における薬価や自由診療、保険適用の可能性について丁寧に整理します。
自由診療での費用相場(ダイエット目的)
日本のクリニックでは、2.5〜15mgのペン4本セットを以下のように価格設定しているケースがあります。
- 2.5mg×4本 約2万9800円
- 5.0mg×4本 約3万9800円
- 7.5mg×4本 約4万9800円
- 10mg〜15mgは最大約7万9800円程度
つまり、1本あたり約7000円〜2万円という計算になり、月4本使うと相場は10万円超えになるケースもあります。
保険適用になる条件
日本では、マンジャロ(チルゼパチド)は糖尿病治療目的では保険適用となりますが、肥満治療(Zepboundとして)は条件付きで保険適用です。
2024年2月から、BMI 27以上かつ高血圧や脂質異常症などが併存する場合に、医師の判断によって保険で処方が可能になりました。
それ以外のダイエット目的では保険対象外であり、自由診療扱いになるため自己負担が必要です。
オンライン診療での処方と流れ
自由診療でマンジャロを使いたい人は、オンライン診療を活用するケースも増えています。
通常、初診で医師と問診や血液検査を行い、その後処方、薬は郵送され、自宅で自己注射という流れです。
2回目以降はフォローアップ(体重・副作用チェック)で通院またはオンラインで継続診療する形が一般的です。
保険適用の場合も同様の流れですが、肥満治療として認められた条件下で処方が可能になります。
マンジャロのよくある質問
マンジャロを検討している人からよく寄せられる疑問について、わかりやすくお答えします。
自己判断で使用せず、気になることがあれば医師に相談するのが安心です。
マンジャロはどのくらいで痩せる?
個人差はありますが、アメリカで行われた臨床試験(SURMOUNT-1)では、約16週間で5〜7%の体重減少が見られ、72週間では最大で20%近くの減少も確認されています。
ただし、日本人におけるデータはまだ十分ではなく、効果の実感には生活習慣との組み合わせが重要です。
リベルサスやオゼンピックとの違いは?
いずれもGLP-1関連薬ですが、マンジャロ(チルゼパチド)はGIPとGLP-1の両方に作用する“デュアルアゴニスト”という新しいタイプです。
これにより、より強力な食欲抑制効果と血糖コントロールが期待できるとされており、肥満へのアプローチが進化しているといえるでしょう。
マンジャロはどこで手に入る?
糖尿病治療での保険適用、またはダイエット目的の自由診療いずれかで、医療機関を通して処方されます。
現在は一部のクリニックでオンライン診療にも対応しており、問診後に自宅へ郵送されるケースもあります。
ただし、市販や個人輸入はリスクが大きく推奨されません。
一度やめたらリバウンドする?
マンジャロの効果は継続的な作用によるものなので、使用をやめると食欲が戻る可能性があり、リバウンドのリスクがあります。
とくに、食生活や運動習慣が不安定な人は再増加しやすいため、医師の指導のもとで徐々に減薬する方法も検討されます。
まとめ
マンジャロは、GLP-1とGIPの両方に作用する新しい注射薬として注目されています。
もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されたもので、強力な食欲抑制作用があり、体重減少効果も確認されています。
その一方で、吐き気や下痢などの副作用、甲状腺疾患リスクなども報告されており、やせたいからと安易に自己判断で使用するのはおすすめできません。
もし気になっている場合は、必ず医師と相談した上で、健康面・費用面・ライフスタイルすべてを考慮したうえで慎重に判断することが大切です。
体重に悩むことがあっても、体を壊してしまっては本末転倒です。
無理のない方法で、少しずつ変えていける自分を大切にしていきましょう。